船外機のクラッチ滑り修理

船外機

今回は、クラッチ不調の船外機を修理していきます。

機種は、ヤマハ4ストローク船外機・F60FETX(60馬力) 型式・6C5

症状の詳細

  1. 後進にギヤは入るが、エンジンを吹かすとクラッチが抜けて空回りする。
  2. ニュートラルの時カラカラ音がする→シフトレバーを後進側に少し動かすと音が消える。

上記②の症状を踏まえて、確認も含めシフトケーブルの再調整をしてみましたが、症状は改善されませんでした。

シフトの入りが悪い時やニュートラル時にクラッチの擦れる音がする場合は、ケーブルの調整が狂っている事がありますが今回は違うようです。

簡単な確認作業を終えて、ロアケースを分解して修理する必要があると分かったので、早速船を上架して作業に入ります。

修理作業

ロアケース取外し

まずは、ロアケースを外します。

ロアケース左右に付いているナット(計4箇所)、トリムタブを外した奥にあるボルト1本とスピードセンサーのホースを抜きます。

左右のナットの内1箇所は、意図せずロアケースが落ちないように完全に外さず残しておく

ホースはインシュロックで止めてあるので、インシュロックをカットして引き抜きます。

トリムタブを外す時は、取付の際に角度が変わらないように印をしておくと良い

すべてのボルト・ナットを緩めたら、ロアケースを抜きます。

先ほども触れましたが、この時1箇所だけナットを残しておきましょう。

こうする事で、ロアケースが不意に抜けた時に落下を防ぐことが出来ます。

安全に作業するためにも、大事なポイントです。

最後は残しておいたナットを外して、ロアケースを抜きます。

この時、ロアケースが重いので腰などを痛めないように気をつけましょう。

ロアケース分解

外したロアケースをバイスなどに挟んで固定し分解作業に移ります。

分解作業の途中で、インペラやギヤオイルなどもチェックします。

まずは、ギアオイルを抜きましょう。

乳化していました。

ドライブシャフトかプロペラシャフトのオイルシール交換が必要です。

どちらのオイルシールが悪くなっているかは、分解を進めながら調べていきます。

ということで、プロペラシャフトを抜きます。

ボルト2本を緩め、引き抜きます。

塩噛みで固くなっている場合、バーナーで炙って特殊工具で引き抜く必要があります。

今回は、塩噛みも無くすんなり外れました。

外したドッグクラッチとギヤを確認します。

後進ギヤ

クラッチの当たる部分が擦れて光っています。

角が取れて丸くなっています。

こうなるとクラッチが抜けやすくなったりするので交換します。

次は、ドッグクラッチ。

こちらも、後進ギヤに当たる部分が光っています。

角もとれているので、ドッグクラッチも交換です。

プロペラシャフトの端についている、シフトプランジャをチェック。

かなり摩耗していました。

シフトの入りがおかしい原因は、この部品にありそうです。

新旧比べると摩耗の具合がよく分かります。

シフトプランジャの先端が当たる部分、シフトカムも確認。

こちらも摩耗が激しいので交換します。

全体的に、シフト周りの部品がかなり摩耗している状態でした。

シフト周りの分解は終わったので、次はオイル漏れの原因を調べるべくドライブシャフト周りを分解していきます。

インペラを外して、その下のアウタープレートを外します。

軸の部分に乳化したオイルが付いていました。

どうやら、ドライブシャフトのオイルシールから水が入っているようです。

こちらのオイルシールも交換します。

不良箇所が分かったので、ドライブシャフト、前進ギヤも外し再利用する部品を清掃していきます。

組み立て

交換部品を注文し、部品洗浄も終わったので組み立てていきます。

まずは、プロペラシャフト。

ドッグクラッチの前後を間違えないよう気をつけましょう。

前進側に「F」のマークが付いています。

その他、スプリングやピンなどで構成されています。

次は、プロペラシャフトハウジング。

こちらは、後進ギヤ・ベアリング・オイルシール・O‐リングなどで構成されています。

ギヤにベアリングを圧入し、ハウジングに取り付けます。

そして、プロペラシャフトのオイルシールを取付け。

取付深さは、4.5~5.5mm

O-リングにグリスを塗り、取付けます。

これで、プロペラシャフトハウジングは完成です。

その他、ドライブシャフトとシフトロッドのオイルシールも組付け。

それぞれ、パーツごとの組付けは完了。

ここから、それぞれのパーツをロアケースに組み付けていきます。

シフトロッド、前進ギヤ、ドライブシャフト、ピニオンギヤ

プロペラシャフトをハウジングに入れる際には、ワッシャーがあるので忘れないように

ロアケースにプロペラシャフトハウジングを組み込んで、インペラなども取付けます。

ロアケースが組み上がったら、オイルシールから漏れがないか圧力をかけて確認。

保持圧力・68.6 kPa(0.69 kgf/cm2)

圧力の抜けもなく、組み上がりました。

仕上げにギヤオイルを入れて、エンジンに取り付ければロアケースの修理は完了です。

60馬力位までなら、標準的な工具でも修理可能なのでDIYでなんとか直してみたい方は挑戦してみて下さい。

ロアケースの脱着やプロペラシャフトハウジングの取付けの際は、シフトをニュートラル位置にして作業して下さい。

今後も、他馬力のロアケース修理の情報も掲載しようと思います。

それでは皆様ご安航を〜

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